2009年6月15日月曜日

最後のマンガ展



熊本の現代美術館で行われた
井上雄彦「最後のマンガ展」を見てきた。

上野の展覧会も見たので2度目だったが、
2度目でも感動した。

井上雄彦のマンガは大好きで、バガンボンドは唯一集めているマンガである。
どこが好きかというと、ストーリーの面白さはもちろん画力が素晴しいから。

展覧会で生の絵を見て、その素晴らしさに圧倒された。
上手などと自分が単純に評価するのは失礼なように思うが、
ここまで絵を極めていることに感嘆してしまう。
(同時にここまで突き詰められていない自分を感じ、少し悔しいようなうらやましいような気持ちになったりもする。。。)

展示方法や絵の見せ方も素晴らしく、それぞれの絵を見せる為の最適な展示状況が作り出されていて、会場内の空気感全体が楽しめる。最初は絵のディテールを注意してみようとするが、徐々にそういったことは忘れて、次の絵、また次の絵と気持ちがはやるようになっていった。
展覧会全体の世界観に飲み込まれてしまうような感覚であった。



上野でも熊本でも沢山の人たちが来場しているようだ。
私は沢山の人が楽しめるものを作っていることが素晴らしいと思う。
なぜなら誰でも分かるという事は、一見単純そうだがそれだけに作るのが大変だと思うからだ。
マンガというのは、沢山の人に読んでもらわなければ成り立たないものであるから、
多くの人が理解できるように「伝える」ことが重視されていると思う。
そういったものをずっと作り続けてきた方だから、ここまで多くの人を魅了するものが出来ているのだと思う。

私は、アートや音楽など、何でも分かりやすいものが好きだ。
別の言い方をすれば、自分が好きなものは、世間一般的に伝わりやすく受け入れられやすいものだったりする事が多い。しかし、そのような自分の嗜好を大きな声で言いにくいと感じることがある。

なぜかと言うと、分かりやすいものが好きという嗜好が、芸術の世界で考えるとなんだか思慮が浅く感受性が低い事のような気がしてしまうからだ。作り手にとってものすごく失礼な表現のようになってしまうのだが、どちらかというと世間一般ではあまり理解されていないものに対して価値を見いだし感動できる人のほうが、感度が高いように感じてしまう自分がいるのだ。

人の目を気にして、そういった卑屈な考え方をしてしまう所があるのだが、しかしやっぱり心は正直に好きなものに反応してしまうものだ。今回の展覧会は、そういう意味で素直に心を動かされたものだった。
しかし、この作品に対する感動を他の人には言いにくいとは全く思わない。
むしろ誰が見ても感動するものではないかと思う。個人の嗜好なんかは超越して、「絶対的にすごいものはすごいんだ」というように感じた。確かな力があればどんなものを作ろうが、その作品は圧倒的なパワーを持つのだと思う。自分もここまで凄いものが作れるようになりたいと感じた。
自分の好きなものに正直に、とことんを突き詰めていきたい。








宮本武蔵が五輪の書を記したと言われる霊巌洞
洞窟の中からの一枚

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